かんたんな注意事項

心身不調の際に精神科・心療内科・メンタルクリニックを受診・通院するとき(あるいは、その前に)、あらかじめ念頭に置いたほうが良いと思われる事項を説明します。 また、医療機関では対応が困難なトラブル・生活問題や社会問題・犯罪被害についての相談窓口や法制度・社会資源などを簡単にまとめます。 [*順不同、思いつくままに書きますので、体系的ではありません。]

労働時間と生産性

以下の文献より、重要箇所を抜粋します(下線筆者)。

http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2017/special/pdf/018-028.pdf(長時間労働と健康,労働生産性 との関係 黒田祥子 (早稲田大学教授)

  • 報酬体系と生産性との関係については, 時間ではなく成果で評価する,いわゆる出来高制 が労働者のモチベーションを高め,生産性を上げる効果を持つことは,これまで主に生産工程の現場で確認されてきている 。しかし心理学の先行研究によれば,成功報酬といった外的な動機付け (extrinsicmotivation)が機能するのは,過去のやり方を踏襲すればこれまでと同じように生産することが可能なタスクにおいてのみであり,創造性や革新性を要求されるような仕事ではむしろうまく機能しないと考えられてきた
  • こうした考え方は,創造性や革新性を要求されるような仕事には,前例を踏襲できないという意味で仕事に高い不確実性があり,試行錯誤の結果, 失敗に終わる可能性も高いことと関係がある。例えば,革新的な発明や技術の開発は,何万回というトライアンドエラーを経て実現する場合がほとんどで,その背後にはたくさんの失敗がある。したがって,こうした仕事に従事している労働者に対して,もし労働時間ではなく成果でのみ評価されるような体制が適用されれば,労働者は失敗す る可能性は高いが,当たれば大きな収益が見込ま れるようなハイリスクハイリターン型のタスクに 挑むインセンティブは低くなる。結果として,労働時間に関わりなく成果だけで評価するという報酬体系は,むしろイノベーションを起こしにくくする可能性があるともいえる。
  • 解雇が比較的容易な国の研究者は,リスクを取って大きな成果を上げるよりも,リスクを取らずに小さい成果 を上げようとするインセンティブが働きやすくなる結果,イノベーションが起こりにくくなるとの結果を報告している。ここでの結果は,成果での み評価され,成果を上げなかった者は解雇されるという体系下で働いている労働者ほど,リスクをとることができなくなり,創造的・革新的な仕事が生まれにくくなる。
  • 短中期的な失敗は許容しつつも,試行錯誤によるリ ターンがある程度確定する段階で成功報酬型に切り替える,という体系が最もインセンティブを引き出しやすい
  • 比較的短期間で成果がみえる仕事ではなく,投資期間が長く革新性が要求される仕事ほど,失敗が許容されるトライアンドエラー期間を長く保ち,安心してリスクをとること ができる体制を確保するほうがよい。
  • 成果だけで評価するという体制は,むしろ創造的な仕事をして いる人ほどリスクを取るインセンティブを弱めるという意味で逆効果であり,トライアンドエラー のために働いた分も評価する体系をある程度確保しておく必要がある
  • 高度プロフェッショナル制といった働き方を創設する際には,年収要件をある程度高めに設けておく必要がある。
  • 最近では長時間労働が疲労等を増すことを通じて,限界生産性を低下させることを示す定量研究も報告されるようになってきた。
  • 週当たり労働時間が50時間を超えると,限界生産性が大幅に低下することや,休日出勤を余儀なくされた日の翌週は,労働者の限界生産性の低下が50時間よりも更に前倒しになる
  • 時間外労働10%の増加は,限界生産性を2 ~4%低下させる。
  • 製造業においては, 労働時間の長時間化は必ずしも生産性の増加につながらない。その他の産業においても,労働時間の短いセクターほど時間当たりの生産性が高い。
  • 業務量が多く働く時間が長くなると,どうしても別の時間を削減しなくてはならなくなるが,その削減対象の最たるものが睡眠時間である。1970 年代以降,フルタイムで働く日本人の平日1日当たり労働時間は趨勢的に増加傾向にあるが,その 影響は主として睡眠時間にしわ寄せされている 。1976年から2011年にかけて の35年間でフルタイムで働く男性は週当たりに して平均で4.5時間,女性も3時間ほど睡眠を削減している
  • 睡眠時間の低下が生産性を顕著に低下させることは多くの文献が示してきており,過重労働は睡眠時間の減少につながる結果,仕事中のミスが増え,ぼんやりが増えることにもつながる
  • 勤務と次の勤務との間のシフト間隔が11時間未満となる回数が多くなると,不眠や強い眠気,過労を訴える労働者が増加する
  • 業種の違いや経営者の能力といった企業間の個体差を調整したうえでも,メンタル不調による休職・退職者比率が高い企業は利益率が低くなる傾向にある